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ゴルフ界期待の新星ツインズ・岩井姉妹が歩んだ“プロ合格”までの長い道のり
「おめでとうメールは100件ずつぐらい、全部返しました」
「『おめでとうメール』は、私も妹も、たぶん100件ずつくらい、いただきました。すぐに全部返しました」

超難関と言われる日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテストに見事合格した18歳の注目の双子姉妹、岩井明愛(あきえ)と千怜(ちさと)は、合格した直後の臨場感を、そんなフレーズで表現してくれた。

100件超の祝福メールに即座に返信したことは、もちろん彼女たち自身の嬉しさの表れである。

だが、実を言えば、明愛と千怜は日ごろから、どんなに多忙であっても、メールやラインには必ず即座に返信している。

今年1月に2人を取材させてもらったときも、時間をもらったこちらがお礼のメールを送る前に、彼女たちの方から「取材ありがとうございました」という丁寧なメッセージがすぐに届き、こちらが慌ててしまった。

ジュニア時代、高校時代から将来性溢れる双子ゴルファーとして方々から熱い視線を向けられてきた2人だが、彼女たちは常に謙虚。そして、周囲への感謝の気持ちに溢れている。100件超の祝福メールに次々に返信したことは、合格した嬉しさとともに、支えてくれた人々への感謝の気持ちの表れでもあったのだろう。

ゴルフ界が期待を寄せるツインズ

二卵性の双子である岩井姉妹は、どちらも中高時代に数々のジュニアタイトル、アマチュアタイトルを獲得。プロの大会にもアマチュア選手として出場し、どちらもローアマに輝くなど数々の好成績を積み上げてきた。

今年3月に埼玉栄高校を卒業し、4月からは同じ県内にある武蔵丘短期大学に進学。進路がそう定まるまでの途上では、コロナ禍の影響を受け、人生のプラン変更を余儀なくされた。高校3年生の秋に受けるはずだったプロテストがコロナ禍で2021年へ延期されたことは、想定外の出来事だったのだ。

しかし2人は、すべてを前向きに捉え、高校卒業と大学進学という人生の節目と同時進行で、プロテストという難関に挑む多忙な道を迷うことなく突き進んだ。

姉・明愛は2020年の日本女子オープンでローアマを獲得したため、プロテストは最終テストのみの一発勝負だった。一方、妹・千怜は3月に第1次予選を突破し、5月に第2次予選も突破。

そして姉妹2人が揃って挑んだ6月22日から4日間の最終テストでは、最終日を姉妹が同組で回るという運命めいた出来事もあった中、明愛が通算12アンダー・3位、千怜が通算7アンダー・9位タイとなり、どちらも初挑戦にして見事合格を果たした。

「ここまでの日々は長かったです。この4日間、通らなきゃいけないというプレッシャーはありました」

そう振り返った姉・明愛は、しかし、すぐに感謝の言葉を続けた。

家族や友だち、みんなの顔を思い出しながらプレーしました。最後の18番のパーパットのときは『みんな、ありがとう』と唱えながら入れました。私は最終テストだけの一発勝負だったけど、今年、推薦で出場させてもらったプロの試合で経験した雰囲気が役に立ったので、それは、すごくありがたかったなって感謝しています」

熾烈な3段階のプロテストをすべて潜り抜けてきた妹・千怜もこう振り返る。

「1つ終わっても気は抜けなかったし、最後の最後まで何が起こるかわからないって集中していたので、合格したときは、ちょっと疲れたなと思いました。1次、2次、最終、どのテストのときも、辛いときは家族や友だちの顔を思い浮かべながらプレーしました。中学のときの親友数人からサプライズでもらった手作りのお守りを、毎回、スタート前に見つめて握り締めました

みんなのお陰で合格できた――2人が語る言葉の端々に、周囲への感謝の気持ちが溢れていた。

振り返れば、岩井姉妹のゴルフ道の始まりは、ある意味、偶然の重なり合いだった。

岩井家の父親・雄士は公務員、母親・恵美子は看護師、そして姉妹の2つ年下の弟・光太は、姉妹の母校・埼玉栄高校でゴルフ部に所属している。

十数年前のあるとき、アベレージゴルファーだった父・雄士が練習場に行く際、まだ5歳ぐらいだった姉妹を連れて行った。ゴルフをさせようと思って連れて行ったわけではなく、母・恵美子が多忙をきわめていたこともあって、半ば仕方なく連れて行ったそうだが、2人は大いに興味を示した。

そして、姉・明愛が「クリスマスにサンタさんにゴルフクラブをお願いしたら、ジュニア用クラブのセットが置いてあった」。それが姉妹のゴルフの出発点になった。

それからは練習場に通うようになり、小学2年生のとき、その練習場の永井哲二プロから「筋がいいね」と声をかけられ、指導を受け始めた。

とはいえ、ゴルフ一筋のゴルフ漬けになったわけではなく、2人は中学では陸上部に所属。明愛は女子サッカーにも夢中になった。

そんな姉妹と歩調を合わせ、父・雄士も弟・光太も、みんなで走り、みんなでゴルフを楽しみ、母・恵美子は体調管理や運転手役を買って出た。

両親がゴルフを強いることは決してなく、ゴルフ以外でも何かを強いることは絶対にしなかった。

「本人たちの気持ちが一番。楽しみながら取り組むのが一番です」と、両親は子どもたちの自主性を尊重した。すると姉妹は、高校進学を控えたころ、陸上やサッカーをやめてゴルフを選び、「ゴルフが強い高校、自分が強くなれる高校に行きたい」と切望した。

家族と決めた「進学」と「プロ挑戦」

埼玉栄高校に進学し、めきめき腕を上げて、2020年全国高等学校ゴルフ選手権特別大会(女子の部)では同校8年ぶりの団体優勝を飾った。

「高校3年の秋に2人でプロテストを受けようね」と姉妹は誓い合った。しかし、コロナ禍で2020年のプロテストが2021年の春以降へ延期されることが発表され、姉妹が描いていたプランはすっかり狂った。

それでも姉・明愛は「6月の最終テストに照準を合わせていこう」、妹・千怜は「そのころ私は自信がなくて焦っていたので、延期になったことはラッキーだと思い、絶対に調子を合わせるぞって思いました」と前向きに捉えた。

両親は「親としては最悪のシナリオも考慮に入れた」。

そして、家族みんなで出した結論が、大学進学とプロテスト挑戦を同時に進める道だった。

武蔵丘短期大学を選んだ理由は「4年間の大学生活は長すぎて気持ちが薄れていくのは怖い」「学びたいと思っていることが学べる」「自宅から近い」「特待生としての受け入れで学費免除が経済的に助かる」。

同大学にはゴルフ部があり、キャンパス内にはゴルフ練習場がある。

姉・明愛は「プロゴルファー人生を終えた先のセカンドキャリアのためにも、自分の身体のことや栄養のことを勉強しておきたい」、妹・千怜は「アスリートとしてやっていくためには自分の身体を自分で管理するのは基本だと思う」と考え、どちらも「健康スポーツ」を専攻。日程をやりくりして授業を受け、卒業することを目指している。

岩井姉妹と直に会って話をしていると、突出した才能を備えたゴルファーであることを、ついつい忘れてしまいそうになる。

それほど彼女たちの姿勢は謙虚で真面目で純粋で、そして周囲を和ませるような温かさがある。

そのワケは、それだけ多くの人々からたくさんの愛情を注がれ、たっぷりの陽光とたっぷりの水と栄養をもらった植物がぐんぐん成長するように、彼女たちも大きく温かく育まれてきたからではないか
と思う。

月1ゴルファーだった父・雄士は「公務員の給料ですから、子どもたちのゴルフの費用を捻出するのは本当に大変で、私は月1のゴルフも諦めて子供たちのゴルフの費用に回しました」と苦笑する。母・恵美子は「元々私は、ゴルフなんてどこがおもしろいのって思っていたぐらいでしたけど、今ではゴルフのことが少しわかります」と明かしつつ、娘たちを支え続けてきた。

プロテストに挑んでいた真っ只中でも、合格が決まったときも、姉妹の頭に真っ先に浮かんだのは「家族への感謝でした」。応援してくれた友だちや幼少期から師事してきた永井プロ、短大の先生、「いろんな人の顔が浮かびました」。

だから姉・明愛は最終テストの72ホール目のファイナルパットを沈めるとき、「みんな、ありがとう」と心の中で唱えた。

100件超の祝福メールすべてに即座に返信したのは、そんな2人が抱いている周囲への感謝の気持ちの表れなのだ。

プロとしてのキャリアが始まるこれからの当面の目標は「最終日最終組を2人で回って優勝争いすること」。

究極の目標は、姉・明愛は「海外メジャーで勝つこと」、妹・千怜は「国内20勝を挙げること」。

そして、たくさん賞金を稼いだら、明愛は「朝日がきらきら光る海が部屋の中からガラス越しに見える大きな家を建てて家族みんなで住みたい」。千怜は「困っている人たちのために寄付をしたい。両親や祖父母に恩返しをしたい」。

優勝して、もっともっとビッグになって、数えきれないほどの祝福メールをもらったとしても「全部返します!」。

迷うことなく、そう即答した姉妹の明るい声が、素敵な和音となって響き渡った。


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この記事への反応

  • この2人にとってプロテストは通過点なんだろうね、観ている側からすると当たり前のようであった。
    ゴルフだけでなく他の競技、向き合い方、おおらかなご両親。全て成長の糧になってる。
    素晴らしい人達、応援あるのみです。

  • 河本結選手始め稲見さんや安田さん等々、今は学生とプロゴルファーを両立してる選手が多いね!
    いつも爽やかな岩井姉妹を応援してます。

  • 岩井明愛(あきえ)さん、千怜(ちさと)さん 姉妹同時合格!オメデトウございます。

  • 明愛さんはサングラスかけたら申ジエと見分けられないくらい似てる。ドライバーショットは違うがアプローチの滑らかさはそっくり

  • 2人で最終組、優勝争い早く観たいな。

  • 首の太さで体を鍛えているのが解る。

  • 妹、可愛い!

  • お二人には初心を忘れず強くて優しい選手として活躍を期待してます